私が初めてファミコンに遭遇したのは、小学4年の夏休み。
クラスメイトのK君宅で、ドンキーコングを披露された時でした。
ゲームセンターにある、あのドンキーコングが家で出来るのか!?と、それはもう興奮したものです。
さらに驚いたことに、カセットを入れ替えれば、他のゲームも出来るということをK君から聞かされました。
家に帰るや否や、「ファミリーコンピュータなるものを買ってくれ」と、母親に頼み込みました。
当時すでに、我が家には「テレビゲーム15」「任天堂のブロック崩し」「カセットビジョン」、その他数々のLSIゲームやゲームウォッチがあり、両親は私のことを今でいう「ゲーマー」と認識しておりました。
それゆえ、多少辟易した様子ながら、近所の玩具店に連れて行ってくれました。
本当に恵まれた環境だったと思っています。
その玩具店には、私が「兄貴」と慕う店長がおりました。
幼少の頃から可愛がってくれていて、ゲームのことはもちろん、ガンプラやチョロQなど、私の趣味嗜好なども完全に把握している人でした。
「やぁ、そろそろ来る頃だと思っていたよ」
不敵に微笑む店長が、店の棚から銀色の箱を取り出した。
「今日はこれを買いに来たんだろう?」
それは紛れもなく、任天堂ファミリーコンピュータでした。
さすが店長!私がいずれ買いに来ると思って、取っておいてくれたのか!
が、その箱には一枚の商札が貼ってあったのを見逃さなかった。
【T君、売約済】
なんと、ファミコンが発売される前、店長と親父との間で「もうすぐすごいゲーム機が出るんですよ。T君絶対欲しがるでしょう。入荷したら1台取り置きしておきますね」というやりとりがあったらしいのです。
それを、いずれ私が自分で「欲しい」と言い出すまで、内緒にしていた親父と店長。
欲しがらなかったらどうするつもりだったんだ、店長。
今、私は誰かに贈り物をする時など、できるだけサプライズ的に不言を貫くことにしています。
それは、小学4年のあの夏の出来事が、自分の中でとても嬉しく忘れられない事だったからであろうと、振り返って思います。